真空管オーディオアンプにおけるカソード抵抗による自己バイアスの動作と、これがA級動作やB級動作、さらにはプッシュプル回路に与える影響について、以下で詳しく解説します。
カソード抵抗による自己バイアスとその影響
カソード抵抗は、真空管のバイアスを安定させるために使用されます。カソードに電流が流れることで、その電圧が発生し、真空管のバイアスが決まります。これが自己バイアスの仕組みで、バイアスが不安定になることなく、長期間安定した動作を実現できます。
自己バイアスを使用すると、一般的にはA級動作が主になります。A級動作では、常に動作点がオン状態に保たれ、カットオフ(真空管が完全にオフになる状態)しません。そのため、常に音声信号の増幅を行い続けます。
カソード抵抗によるA級動作とB級動作
カソード抵抗による自己バイアスは、A級動作に適していると言われることが多いです。B級動作には通常、固定バイアス回路が使用されます。B級動作では、信号の正半周期と負半周期において、片方の真空管が増幅を行い、もう片方がオフになります。カソード抵抗による自己バイアスでは、A級動作が可能でも、B級動作には適しません。
プッシュプル回路での影響
プッシュプル回路では、2つの真空管が対になって動作します。カソード抵抗を使った自己バイアスの場合でも、プッシュプル回路はA級動作になります。これは、常に2つの真空管が動作し続けるため、カットオフが発生しません。したがって、A級動作の特徴を持つプッシュプル回路となります。
出力の違いと性能
出力は、シングルアンプに比べて2倍にはなりません。プッシュプル回路での増幅は、2つの真空管の交互の動作によって音質が向上し、歪みが減少しますが、シングル回路の2倍の出力を得ることはありません。プッシュプル回路は、特に歪みを低減させる利点があります。
まとめ
カソード抵抗による自己バイアスは、真空管オーディオアンプにおいて安定したA級動作を実現しますが、B級動作には向いていません。プッシュプル回路においてもA級動作が行われ、歪みの低減に効果的です。出力に関しては、シングルアンプの2倍にはならないものの、プッシュプル回路ならではの音質改善が期待できます。
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