3Dプリンタで「スライスソフト側で印刷速度を設定しておき、印刷中にプリンタの速度を少し下げても出来上がりに影響するのか?」という疑問をお持ちの方に向けて、スライス後にプリンタ側で速度を変える際の仕組み・メリット・限界を、具体例を交えてわかりやすく解説します。
印刷速度の意味:スライス段階とプリンタ側での変更
まず、スライサーソフト(例:Creality Print、Bambu Studio)で「mm/s」単位で印刷速度を設定するということは、フィラメントの押し出し速度・移動速度・冷却のタイミングなどを総合的に設計するということです。([参照]3D Printing Speedに関するガイド)
一方、印刷中にプリンタの「速度 %」を変更する(例えば100%→90%)という操作は、基本的にはスライス後に生成されたG‑code の移動速度を比率で変える「実行時の調整」です。実際には「印刷ヘッド移動速度・押し出し速度」が比例して変化します。([参照]実機フォーラムでの速度変更の影響議論)
プリンタ側で速度を落としたときに起きること/起きないこと
プリンタ側で速度を少し落としたとき、次のような影響が出る可能性があります。
- 移動速度が落ちるため、振動/ブレの影響が減る → 表面品質が改善される可能性あり
- 押し出し速度も落ちるため、冷却時間が長くなり、層間接着や仕上がりが改善されることもある
ただし次のような「起きにくい/限界がある」点もあります。
- スライス時に設定された「押し出し量/加速度/冷却設定」が変わらないため、速度低下だけでは十分な品質改善にならない場合あり。
- あまりにも遅くすると、フィラメントが過熱されたり、冷却不足になったりして逆に品質が悪くなることがあります。([参照]同ガイド:「遅過ぎる速度」でのデメリットも記載)
具体例:Ender 3 V3 KEで「スライス速度90%/プリンタ設定80%」した場合
たとえば、スライサーで「印刷速度 60 mm/s」に設定し、そのG‑codeをプリンタに読み込んだとします。その後プリンタ側で速度を80%に設定すると、実質的な速度は約48 mm/sになります。
この場合、振動やブレによる「リング状の歪み(リッピング)」「微細な波状痕」が軽減される可能性があり、表面仕上がりが少し改善するという報告があります。([参照]Reddit:低速化での品質変化議論)
しかし“最大限”の改善を狙うならスライス側で設定するべき理由
スライス段階で速度・加速度・冷却・押出量などを一括で最適化しておくことで、プリンタの特性(軸の剛性、フィラメント特性、ノズル・冷却能力)を踏まえた“質の高いG‑code”を生成できます。([参照]3DPrinting・StackExchange:スライサー速度設定の理由)
つまり、プリンタ側で速度を落とすのは“補正”の意味合いが強く、本来はスライス側で最適化すべきという考え方が一般的です。たとえば、スライス時に充填率・サポート材・層厚・速度を一体で設計しておけば、速度だけを後から変えても“その他の要素に最適化が追いつかない”ことがあります。
速度変更を活かすためのチェックリスト
速度を微調整して品質を上げたい場合、以下を確認しておきましょう。
- ノズル・ホットエンド・フィラメントが安定動作可能な状態か:高速動作や低速動作では押し出し量・冷却能力が影響を受ける。
- 冷却ファン・環境温度が適切か:速度を落とすことで冷却時間が長くなり、熱だまり・変形の恐れがあります。
- 加速度・ジャーク(急変動速度)設定にも注目:速度だけではなく、加速=プリントヘッドの動き始め/止まりの挙動も品質に影響します。
まとめ
要点を整理すると、スライス時に設定した印刷速度をプリンタ側で少し落とすことは、確かに表面仕上がりや振動・ブレの抑制という面で品質改善につながる可能性があります。一方で、スライス側の他の設定(押し出し量・冷却・加速度など)がそのままの場合、速度を落としただけでは“劇的な改善”にはつながりにくいというのが実情です。
もし「もっと品質を上げたい」「ノズル替えてる/高解像度モードで使いたい」という場合は、シライス段階で速度・層厚・充填率・サポート等を総合的に見直し、印刷中の速度微調整は“仕上がり調整”として使うのが賢いアプローチです。


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