1980年代に流行していたカセットテープへのダビング技術には、当時の音質向上のために様々な工夫がされていました。特に、クロームやメタルテープのテープ判別用の穴をセロテープで塞ぐという方法が音質に変化をもたらし、低音や高音が際立つ「ドンシャリ音」となるという現象が起こっていました。この記事では、なぜこの方法で音質が改善されたのか、カセットデッキ内で何が起こっていたのかを解説します。
1. クロームテープとメタルテープの違い
まず、クロームテープとメタルテープについて簡単に説明します。カセットテープには、さまざまな素材が使われており、それぞれが異なる音質特性を持っています。クロームテープは高域に強みがあり、メタルテープはより広範な周波数帯域を持ち、優れたダイナミックレンジを提供します。
これらのテープは、内部で音の信号を記録する方法が異なるため、それぞれに最適な録音機器の設定が求められます。テープデッキは、これらのテープの種類を判別するために「テープ種類判別用の穴」を使用します。
2. セロテープで穴を塞ぐとどうなるのか
カセットテープにあるテープ種類判別用の穴を塞ぐと、テープデッキはどのテープタイプかを認識できなくなり、通常の設定では録音や再生が行われます。この方法を使うことで、テープデッキの設定が通常よりも「ドンシャリ」な音質に変化します。
これは、テープデッキがクロームやメタルテープ用に設定された周波数特性を無視し、標準的なテープ設定で録音するため、音質が高音と低音が強調される結果となり、特に音がクリアで力強く感じられることがあります。
3. 音質が変わる仕組み
テープデッキがテープの種類を自動的に認識して設定を変更する理由は、テープの磁気特性が異なるためです。クロームテープやメタルテープは、特定の帯域でより良い音質を提供するために設計されています。
しかし、セロテープでその穴を塞ぐと、テープデッキはこれらの特性を無視し、通常のテープの設定で録音を行うため、音質がドンシャリ(低音と高音が強調された音)になり、音が明確で力強く聞こえることになります。
4. 他の影響と注意点
この方法が有効だった一方で、音質の変化は一時的であり、あくまで録音機器の設定による影響です。過度に高音や低音を強調することで、バランスの取れた音質を損なう可能性もあります。
さらに、この手法はすべてのカセットテープやデッキに適用できるわけではなく、機器の特性やテープの種類によっては、逆に音質が劣化することもあります。
5. まとめ
カセットテープのテープ種類判別用の穴をセロテープで塞ぐことで、低音と高音が強調された「ドンシャリ音」が得られる仕組みは、テープデッキの設定が変わることによる音質の変化です。この方法を試すことで、特定の音質に改善が見られることがありますが、すべての機器やテープで効果があるわけではないため、注意が必要です。
当時の音質向上のための工夫や技術が、今でも多くの人々にとって懐かしい思い出として残っていることは、音楽愛好家にとって貴重な経験でした。
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