3Dプリンターでは、造形物を支えるサポート材を減らすために「ベッドを動かさず、プリントヘッドだけを縦横方向へ動かせばよいのでは?」と考えることがあります。実際にそのような構造の3Dプリンターも存在しますが、一般的な家庭用3Dプリンターで採用される構造には、それぞれ理由があります。この記事では、A1 miniのようなベッドが動く方式と、ヘッドが縦横に動く方式の違い、サポート材削減への影響、設計上のメリットやデメリットについて解説します。
3Dプリンターの動き方には複数の方式がある
3Dプリンターは、プリントヘッドと造形テーブルをどのように動かすかによって構造が大きく分かれます。代表的なものには、ベッドが前後に動く方式、ヘッドがXY方向に動く方式、デルタ型などがあります。
A1 miniのような構造では、プリントヘッドが左右方向と上下方向に動き、ベッドが前後方向へ移動します。この方式は「ベッドスリンガー型」と呼ばれることが多く、家庭用3Dプリンターでは非常に一般的です。
一方で、ベッドを固定し、ヘッドが縦横方向へ移動する方式も存在します。CoreXY方式などが代表例で、高速造形向けの機種で多く採用されています。
ヘッドだけを動かす構造ならサポート材は減るのか
結論からいうと、ヘッドだけを自由に動かせる構造にしても、サポート材が大幅に減るとは限りません。
サポート材が必要になる主な理由は、造形物の下側に空間があり、溶けたフィラメントを空中に積み重ねられないためです。これはプリンターの動き方よりも、モデルの形状や積層方向によって決まります。
例えば、橋のような形状を印刷する場合、ベッドが固定されていてもヘッドが自由に動いても、空中に何もない状態で長い距離を印刷するとフィラメントが垂れやすくなります。そのため、ある程度の支えが必要になります。
ベッドを動かさないメリットとは
では、なぜベッド固定式の3Dプリンターが存在するのでしょうか。大きな理由は、高速化や大型造形への対応です。
ベッドが動く方式では、造形物そのものを前後に移動させる必要があります。造形物が大きく重くなるほど、移動時の慣性が大きくなり、高速移動すると振動やズレが発生しやすくなります。
例えば高さ20cm以上の大きなモデルを印刷する場合、重い造形物を載せたベッドを高速で往復させるより、軽いプリントヘッドだけを動かすほうが機械的には有利です。
ヘッドを縦横に動かす方式にも問題がある
ヘッドを自由に動かす構造は万能ではありません。XY方向のレールやベルト機構が複雑になり、製造コストや調整の難易度が上がります。
特に家庭向けの小型3Dプリンターでは、部品点数を増やすよりも、シンプルな構造で安定して動作させることが重要です。ベッドスリンガー型は構造が比較的単純で、価格を抑えながら高い精度を実現できます。
また、ベッドが動く方式でも、入力シェーピングや振動補正などの技術によって、高速印刷時の弱点はかなり改善されています。
サポート材を減らすにはプリンター構造以外も重要
サポート材を減らしたい場合、プリンターの構造変更よりも、造形設計やスライサー設定を見直すほうが効果的な場合が多くあります。
例えば、モデルを45度傾けて配置する、分割して印刷後に組み立てる、ブリッジ部分の長さを短くするなどの工夫によって、サポート量を大きく減らせます。
また、Bambu Labなどの最新機種では高速印刷や冷却制御が進化しており、同じ形状でも以前よりサポートなしで印刷できるケースが増えています。
用途によって最適な3Dプリンター構造は変わる
小型フィギュアや日用品などを家庭で印刷する場合は、A1 miniのようなベッドスリンガー型でも十分高品質な造形が可能です。
一方で、大型パーツを高速で大量生産したい場合や、重量のある造形物を安定して印刷したい場合は、CoreXY方式などのベッド固定型が向いています。
つまり「ベッドが動かないほうが必ず優れている」というわけではなく、印刷する物の大きさや目的によって適した構造が異なります。
まとめ
ベッドを固定してプリントヘッドだけを縦横方向へ動かす3Dプリンターは実際に存在しますが、それだけでサポート材が大幅に減るわけではありません。
サポート材の量は主に造形物の形状、積層方向、スライサー設定によって決まります。ヘッド移動式は高速化や大型造形にメリットがありますが、構造が複雑になるというデメリットもあります。
A1 miniのようなベッド移動式も、家庭用途では十分に合理的な設計です。サポート材を減らしたい場合は、まずモデル配置や設計方法を工夫することが、最も効果的な改善方法になります。


コメント