電子レンジといえば、以前は庫内の丸い皿が回転する「ターンテーブル式」が一般的でした。一方、現在の中・上位機種では庫内の底面が平らな「フラットテーブル式」が広く採用されています。
ただし、ターンテーブル式からフラットテーブル式への移行には明確な境目があるわけではありません。また、現在でも低価格帯を中心にターンテーブル式の新品が販売されているため、「完全に置き換わった」という理解にも注意が必要です。
この記事では、日本の家庭用電子レンジを中心に、フラットテーブル式が登場・普及した時期や、ターンテーブルを使わずに加熱できる仕組み、現在もターンテーブル式が残っている理由まで整理して解説します。
電子レンジにターンテーブルが採用されていた理由
電子レンジは、マグネトロンで発生させたマイクロ波を食品に作用させて加熱します。しかし庫内にマイクロ波を放射するだけでは、電磁波の分布などによって食品の場所ごとに加熱の強弱が生じます。
そこで長く採用されてきたのが、食品を載せた皿そのものを回転させるターンテーブル方式です。食品の位置を連続的に変えることで、特定の部分だけが加熱され続けることを抑え、温めムラを軽減する仕組みです。
構造が比較的シンプルで製造コストも抑えやすいため、ターンテーブル式は家庭用電子レンジで長期間にわたって普及しました。
ターンテーブルのない「フラットテーブル式」とは
ターンテーブルを搭載しない電子レンジは一般に「フラットテーブル式」「フラット庫内」などと呼ばれています。食品を回転させる代わりに、庫内へマイクロ波を効率的に分散させる仕組みが使われています。
ここで注意したいのは、すべてのフラットテーブル式が単純に「マイクロ波の射出口そのものを回している」とは限らないことです。製品によって構造は異なり、導波管から入ったマイクロ波を回転アンテナなどで拡散させる方式や、センサー制御などと組み合わせて加熱ムラを抑える方式があります。
つまり、ターンテーブル式では「食品側を動かす」のに対し、フラットテーブル式では食品を動かさず、マイクロ波の分布や加熱制御を工夫していると考えると分かりやすいでしょう。
フラットテーブル式電子レンジはいつ登場した?
ターンテーブルを使わない電子レンジの技術そのものは比較的古くから存在しますが、現在につながる家庭用のフラット庫内電子レンジが日本市場で目立って普及していくのは、主に1990年代後半から2000年代にかけてです。
特に2000年代には、単機能電子レンジだけでなくオーブンレンジの高機能化が進み、赤外線センサーなどの検知技術、インバーター制御、庫内設計などと組み合わせたフラット庫内の製品が増えていきました。
したがって、「ある年に初めてフラット式が発売され、その翌年から一斉に置き換わった」という歴史ではありません。メーカーや製品カテゴリー、価格帯によって導入時期が異なり、長い期間をかけてターンテーブル式と併売されながら普及しています。
2000年代からフラットテーブル式が急速に普及した理由
フラットテーブル式が支持された大きな理由の一つが、庫内スペースを有効利用できることです。
ターンテーブル式では、食品が回転できなければ均一な加熱が期待できません。例えば横長のコンビニ弁当を入れたとき、弁当の角が庫内の壁に当たって回転が止まってしまうことがあります。
フラットテーブル式なら食品そのものを回転させる必要がないため、庫内に収まるサイズであれば長方形の弁当や大きな皿も置きやすくなります。
さらに底面が平らなので、使用後の掃除がしやすい点も大きなメリットです。ターンテーブルや回転ローラーを取り外して洗う必要がなく、庫内底面を布などで拭き取りやすくなっています。
ターンテーブル式はいつ「ほぼ終了」したのか
ここは誤解されやすいポイントです。ターンテーブル式の新品販売は現在でも終了していません。そのため、「○年に新品市場からほぼ完全になくなった」と特定することはできません。
現在でも、比較的安価な単機能電子レンジではターンテーブル式が採用されています。構造をシンプルにして本体価格を抑えやすいことが、その理由の一つです。
一方で、中価格帯以上の電子レンジやオーブンレンジではフラットテーブル式が非常に一般的になっています。その意味では、2000年代から2010年代にかけて主流が徐々にフラットテーブル式へ移ったと捉えるのが実態に近いでしょう。
ターンテーブル式とフラットテーブル式の違い
両方式を比較すると、それぞれにメリットがあります。
| 比較項目 | ターンテーブル式 | フラットテーブル式 |
|---|---|---|
| 食品の動き | 食品を載せた皿が回転する | 基本的に食品は回転しない |
| 大きな弁当 | 壁に当たって回らない場合がある | 庫内寸法内なら置きやすい |
| 掃除 | 皿やローラーなどの清掃が必要 | 底面が平らで拭きやすい |
| 構造 | 比較的シンプル | マイクロ波の拡散や制御を工夫 |
| 価格帯 | 低価格モデルにも多い | 現在は幅広い価格帯で普及 |
単純に新しい方式だからフラットテーブル式がすべての面で優れているというわけではありません。価格を最優先する場合には、現在でもターンテーブル式は合理的な選択肢です。
なぜ現在もターンテーブル式電子レンジが販売されているのか
ターンテーブル式がなくならない大きな理由は、低価格の電子レンジを作りやすいことです。電子レンジに求める機能が「冷凍食品や飲み物を温められれば十分」という場合、高度なセンサーや複雑な加熱制御が必ずしも必要とは限りません。
一人暮らし用やセカンド電子レンジ、オフィス用などでは本体価格の安さが重視されるため、シンプルなターンテーブル式にも一定の需要があります。
一方、大きな弁当を頻繁に温める家庭や、庫内の掃除を簡単にしたい場合にはフラットテーブル式との相性がよく、現在はこちらを積極的に選ぶ人が増えています。
電子レンジの歴史を見ると「置き換え」より「棲み分け」に近い
電子レンジの変化を振り返ると、ターンテーブル式が突然姿を消してフラットテーブル式へ完全移行したわけではありません。
1990年代後半から2000年代にかけてフラット庫内の製品が存在感を増し、その後、高機能なオーブンレンジを中心にフラットテーブル式が一般化していきました。一方でターンテーブル式も低価格帯を中心に残りました。
そのため電子レンジ市場の歴史としては、「旧方式が廃止された」というより、フラットテーブル式が主流になりつつ、用途と価格帯によってターンテーブル式も残っているという表現が適切です。
まとめ
ターンテーブルを使わない家庭用電子レンジは一日にして現在の主流になったわけではなく、1990年代後半から2000年代にかけてフラット庫内の製品が広がり、その後2000年代から2010年代にかけて中・上位モデルを中心に一般的な方式となっていきました。
また、フラットテーブル式は単純に「射出口を回転させる方式」だけを意味するものではありません。回転アンテナなどによるマイクロ波の拡散やセンサー制御など、メーカーや機種によってさまざまな技術が採用されています。
そして重要なのは、ターンテーブル式が完全に置き換えられたわけではないことです。現在でも新品の低価格電子レンジにはターンテーブル式が存在します。したがって、電子レンジの歴史は「ターンテーブルが廃止された時期」を探すより、「2000年代以降にフラットテーブル式が主流へ移行した」と理解するのが実態に近いでしょう。


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