写真家・荒木経惟(あらき のぶよし)氏は、フィルムカメラのイメージが非常に強い写真家ですが、デジタルカメラについても実際に使用していることを本人がインタビューで語っています。ただし、荒木氏は特定の1台だけを長期間メイン機として使うタイプではなく、被写体や作品に合わせてさまざまなカメラを使い分けてきました。
そのため「荒木経惟が使っているデジカメはこの機種」と現在の1機種に断定するのは難しいのが実情です。公開されているインタビューや作品資料を確認すると、むしろカメラそのものを作品表現の一部として選択するという荒木氏独特の考え方が見えてきます。
荒木経惟はデジタルカメラも使っている
荒木経惟氏というと、ライカ、ペンタックス67、プラウベル・マキナ67などのフィルムカメラを連想する人が多いでしょう。しかし、デジタルカメラをまったく使わない写真家というわけではありません。
2015年に掲載されたインタビューでは、デジタルカメラについて質問された際、設定は細かく調整せずオートで使用し、小型のカメラを身近に置いて撮影するという趣旨の発言をしています。つまり少なくともこの時期には、小型デジタルカメラを日常的な撮影に利用していたことが確認できます。
また2017年のインタビューでも、現代のデジタルカメラの高性能化について独自の考えを述べながら、自身もデジタルカメラを使うことがあると語っています。デジタルを全面的に否定しているというより、フィルムとデジタルを含めて撮影目的に応じて選んでいると考えるほうが実態に近いでしょう。
「現在使っているデジカメの型番」を1台に断定するのは難しい
荒木氏について調べる際に注意したいのが、本人が非常に多くのカメラを使ってきたことです。公開資料ではフィルム機について具体的な機種名が数多く確認できる一方、デジタル機については「小さなデジカメ」といった表現にとどまり、型番まで明記されていないインタビューもあります。
したがって、ネット上の写真だけを根拠に「荒木経惟の愛用デジカメは○○である」と断定するのは慎重であるべきです。撮影された時期によって使用機材が異なる可能性もあります。
荒木経惟氏の場合、「何のカメラを使う人か」ではなく、「被写体によってカメラを変える人」と理解すると分かりやすくなります。
荒木経惟は被写体によってカメラを使い分ける
荒木氏のカメラ選びを理解するうえで重要なのが、カメラを単なる記録装置として扱っていないことです。武蔵野美術大学のインタビューでは、写真はカメラによって決まるという趣旨の発言をし、撮るものに応じて機材を選択していることを語っています。
つまり、高性能だから最新モデルを選ぶ、画素数が多いからそのカメラを使う、といった一般的な機材選びとは少し考え方が違います。撮影する人物やテーマ、そのときの感覚に合うカメラを選ぶこと自体が撮影表現の一部になっています。
これは荒木氏の使用機材が一種類に絞れない理由でもあります。ある作品で使用したカメラと、日常のスナップで手に取るカメラが同じとは限りません。
荒木経惟の代表的な使用カメラ
荒木氏は長い写真家人生の中で数多くのカメラを使用しています。特に知られているもののひとつがプラウベル・マキナ67です。1980年代以降の日常的な撮影で使用され、荒木氏の「私写真」を語るうえでも重要なカメラとなっています。
そのほか、ペンタックス67、ペンタックス645、ライカ、ニコンSP、コニカのコンパクトカメラなど、35mm判から中判まで幅広い機材を使用してきました。
2017年の写真展「花遊園」について報じた記事では、撮影にペンタックス67または645とフジクロームを使用したことが紹介されています。この時期になってもフィルムが重要な制作手段として残っていたことが分かります。
フィルム中心なのにデジカメも使う理由
フィルムとデジタルのどちらか一方だけを選択する必要はありません。荒木氏の発言を追っていくと、この点が非常に分かりやすく表れています。
作品としてじっくり撮影するときには中判フィルムカメラを使い、日常で目の前に現れたものを素早く記録するときには小型デジタルカメラを使う、といった使い分けが可能です。
特にデジタルカメラはフィルム交換が不要で、撮影枚数をあまり意識せずシャッターを切れます。日常を連続的に記録する荒木氏の撮影スタイルとは、意外に相性のよい部分もあります。
荒木経惟のデジカメ撮影は細かな設定を重視していない
写真好きにとって興味深いのが、荒木氏がデジタルカメラを使用するときの設定です。2015年のインタビューでは、デジカメ使用時のシャッタースピードや露出調整について聞かれ、基本的にオートで撮影するという趣旨の回答をしています。
これは「プロ写真家なら必ずマニュアル露出を使う」というイメージとは対照的です。もちろん作品や使用カメラによって撮影方法は異なりますが、少なくともデジタルでの日常的な撮影では、設定を追い込むことよりもシャッターを切ることを優先している様子がうかがえます。
写真表現ではカメラの設定そのものより、いつ、何を、どの位置から撮るのかが重要になる場合があります。荒木氏のスタイルは、その典型的な例ともいえるでしょう。
荒木経惟とリコーGRの関係は?
ストリートスナップの著名写真家と小型デジタルカメラを調べると、リコーGRシリーズの名前が候補として挙がることがあります。初代GR DIGITALは2005年に発売されたコンパクトデジタルカメラで、35mm判換算28mm相当の単焦点GRレンズを搭載していました。
ただし、荒木氏が小型デジタルカメラを使用しているという事実と、「特定世代のGR DIGITALを愛用していた」という話は分けて考える必要があります。確認できる一次資料や信頼性の高いインタビューで型番が明示されていない場合、外観が似ているという理由だけで機種を断定するのは適切ではありません。
荒木氏の使用デジカメを調べる場合は、写真展の作品リスト、写真集の奥付や撮影データ、本人へのインタビューなど、撮影時期と機材が明示された資料を優先すると確実です。
荒木経惟のような撮り方をしたいなら同じ機種である必要はない
好きな写真家と同じカメラを使ってみたいという楽しみ方はもちろんあります。しかし荒木氏の場合、作品の特徴を作っているのは特定のカメラだけではありません。
例えば日常のスナップなら、小型で常に持ち歩けるコンパクトデジタルカメラやスマートフォンでも「気になった瞬間に撮る」という考え方は実践できます。カメラをバッグから取り出して設定している間に被写体が変化してしまうなら、多少画質が劣っていてもすぐ撮れるカメラのほうが適していることがあります。
反対に、荒木氏の中判作品に近い撮影体験を求めるのであれば、デジカメの機種を探すより、ペンタックス67やプラウベル・マキナ67など実際に作品制作で使われたフィルムカメラについて調べるほうが理解を深めやすいでしょう。
写真家の「使用機材」を調べるときの注意点
著名な写真家の使用機材についてネット検索すると、「愛用カメラ」として特定機種が紹介されていることがあります。しかし、写真家は仕事や作品ごとに複数の機材を使うため、必ず撮影年代まで確認することが重要です。
例えば「2005年に使っていた」「ある写真集で使った」「インタビュー時に持っていた」「現在のメイン機」という情報は、それぞれ意味が違います。過去に一度使った機種が、現在も愛用機とは限りません。
特に荒木氏はカメラを使い分けること自体について本人が語っているため、「歴代使用機材」と「現在使用している機材」を明確に区別して調べる必要があります。
まとめ:荒木経惟はデジカメも使うが特定の1台だけを愛用するスタイルではない
荒木経惟氏はフィルム写真の印象が強い写真家ですが、公開されている本人のインタビューから、小型のデジタルカメラも撮影に使用してきたことが確認できます。一方、確認できる資料だけでは、現在使用しているデジカメを特定の1機種・型番に絞って断定することは困難です。
荒木氏はプラウベル・マキナ67、ペンタックス67・645、ライカをはじめ、多種多様なカメラを作品や被写体に応じて使い分けてきました。デジタルカメラについても、その選択肢のひとつとして捉えるのが適切でしょう。
荒木経惟氏の写真を理解するうえでは、「どの機種を使っているか」だけでなく、「被写体に合わせてカメラを選び、身近にあるカメラですぐ撮る」という撮影姿勢にも注目すると、その写真表現がより分かりやすくなります。


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