Wi-Fiルーターの仕様を見ると、2.4GHz帯の最大通信速度として574Mbps程度を掲げる製品が多い一方、1148Mbpsやそれに近い1Gbps超の数値を掲げる製品もあります。ここで気になるのが、スマートフォンやパソコンなどの接続端末が本当に2.4GHz帯で1Gbpsを超える速度で通信できるのかという点です。
結論からいえば、ルーターに記載された1148Mbpsという数字は、そのまま1台のスマートフォンで1Gbps以上の実効速度が出ることを意味しません。Wi-Fiの最大通信速度は、周波数帯だけでなく、Wi-Fi規格、チャネル幅、空間ストリーム数、変調方式、そして子機側の対応仕様によって決まります。ルーター選びで数字に惑わされないために、仕組みから整理していきます。
2.4GHz帯の「1148Mbps」はどのように実現しているのか
2.4GHz帯で1148Mbpsというスペックは、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)対応ルーターなどで見られます。代表的な構成では、40MHzのチャネル幅と高効率な変調方式を利用し、複数の空間ストリームを組み合わせることで、ルーター側の理論上の最大リンク速度を高めています。
例えばWi-Fi 6では、40MHz幅・1024-QAMの場合、1空間ストリームあたりの最大PHYレートは約286.8Mbpsです。これを4ストリーム使用すると約1147Mbpsとなり、製品仕様では端数を丸めて1148Mbpsなどと表記されます。
つまり、1148Mbpsという数字を見たときは「2.4GHzならどの端末でも1148Mbpsでつながる」と考えるのではなく、その速度を成立させるにはルーターと子機の双方が必要な通信条件に対応している必要があると理解することが重要です。
574Mbpsと1148Mbpsの違いは空間ストリーム数が大きい
Wi-Fi 6ルーターでよく見かける2.4GHz帯の574Mbpsと1148Mbpsは、代表的な構成では空間ストリーム数の違いによって説明できます。40MHz幅・1024-QAMを前提にすると、2ストリームなら最大約574Mbps、4ストリームなら最大約1148Mbpsです。
| 構成例 | 2.4GHz帯の最大PHYレートの目安 |
|---|---|
| Wi-Fi 6・40MHz・1ストリーム | 約287Mbps |
| Wi-Fi 6・40MHz・2ストリーム | 約574Mbps |
| Wi-Fi 6・40MHz・4ストリーム | 約1148Mbps |
ここで重要なのが、ルーターが4ストリームに対応していても、接続するスマートフォンが2ストリームまでなら、そのスマートフォンとのリンクが自動的に4ストリームになるわけではないことです。通信能力は基本的に双方が共通して利用できる範囲に制限されます。
このため、4ストリーム対応の高性能ルーターには意味がないということでもありません。複数端末を同時に利用する家庭や、対応する無線LANアダプターなどを使う環境では、高性能な無線部を搭載するメリットが生まれる場合があります。
2.4GHzで1Gbps超に対応する子機はある?
技術的には、必要なストリーム数やWi-Fi規格などに対応した子機であれば、2.4GHz帯で1Gbpsを超えるPHYレートを成立させることは可能です。ただし、一般的なスマートフォンでは端末のサイズ、消費電力、アンテナ設計などの事情から、ルーターのように多数の空間ストリームを搭載することは一般的ではありません。
特にスマートフォンでは2×2 MIMOの構成が広く使われています。そのため、2.4GHz帯で4ストリームを必要とする1148Mbps級ルーターを用意しても、1台のスマートフォンがそのスペックを丸ごと利用できるとは限りません。
パソコンについても同様で、内蔵Wi-FiやUSB無線LAN子機の仕様によって利用可能なストリーム数やチャネル幅が異なります。ルーターの速度だけを見るのではなく、子機側のWi-Fi規格、MIMO構成、対応チャネル幅まで確認するのが確実です。
最新iPhoneなら2.4GHzで1Gbpsを超えられるのか
iPhoneのようなスマートフォンについても、「最新機種だからルーターの最大速度をそのまま利用できる」とは限りません。Wi-Fi 6、Wi-Fi 6E、Wi-Fi 7といった新しい規格への対応と、特定の周波数帯で利用できる空間ストリーム数やチャネル幅は別の話だからです。
また、Wi-Fi 7対応端末であっても、Wi-Fi 7の高速化機能がすべて2.4GHz帯で同じように利用できるわけではありません。非常に高速な通信を狙う場合には、一般に5GHz帯や6GHz帯の広いチャネル幅を利用できる環境のほうが有利です。
そのため、スマートフォンを高速通信させる目的だけで「2.4GHz 1148Mbps」という数字を重視してルーターを選ぶ必要性は高くありません。使用するiPhoneやその他の端末について、メーカーが公表しているWi-Fi仕様を確認することが大切です。
そもそも「最大1148Mbps」は実際の通信速度ではない
もう一つ注意したいのが、Wi-Fiルーターに記載されている574Mbpsや1148Mbpsは、一般に無線区間における規格上の最大PHYレートであり、インターネットのダウンロード速度そのものではないことです。
Wi-Fi通信では制御情報や再送などにも通信容量を使用するため、実際にアプリや速度測定サービスで確認できるスループットはリンク速度より低くなります。さらに2.4GHz帯はBluetooth、近隣住宅のWi-Fi、電子レンジなどと周波数帯が重なりやすく、混雑や干渉の影響も受けやすい特徴があります。
例えば端末のWi-Fi画面やOS上で574Mbpsに近いリンク速度が表示されたとしても、インターネット速度測定で574Mbpsがそのまま出るとは限りません。回線速度、ルーターの処理性能、電波状況、距離、障害物、接続台数なども実効速度を左右します。
2.4GHzと5GHzは「最大速度」だけで選ばない
2.4GHz帯の大きな利点は、一般に5GHz帯より障害物の影響を受けにくく、遠くまで電波が届きやすいことです。一方で利用できる帯域幅が狭く、周囲のWi-Fiなどとの干渉も発生しやすいため、高速通信では5GHz帯や6GHz帯が有利になるケースが多くあります。
例えばルーターの近くで大容量ファイルを転送したり、高速な光回線をスマートフォンで活用したりするなら、対応端末では5GHz帯を優先するのが現実的です。一方、ルーターから離れた部屋にあるスマート家電などでは、速度より到達距離を優先して2.4GHz帯を使うという選択が適しています。
したがって、2.4GHz帯で1148Mbpsに対応していること自体はルーターの無線性能を示す一つの仕様ですが、「2.4GHzが1148Mbpsだから、574Mbpsのルーターよりスマホが必ず2倍速くなる」という意味ではありません。
ルーター購入時に確認したいポイント
ルーターを比較するときは、「2.4GHz最大1148Mbps」のような最大値だけではなく、実際に使用する端末との組み合わせを考えることが重要です。特にスマートフォン中心の家庭では、5GHz・6GHz側の仕様やWi-Fi規格、ルーターの設置場所なども通信品質に大きく影響します。
- 使用端末がWi-Fi 5・6・6E・7のどれに対応しているか
- 端末が対応する空間ストリーム数
- 2.4GHz・5GHz・6GHzのどの帯域を利用できるか
- 各帯域で利用可能なチャネル幅
- 有線LANポートが1GbEか2.5GbE以上か
- 同時に接続する端末数
- 住宅の広さや壁の数、近隣Wi-Fiの混雑状況
高速なインターネット回線を契約している場合には、有線LAN側も重要です。無線部分だけが高速でもWAN/LANポートや回線自体がボトルネックになれば、その性能を十分に生かせません。
まとめ:2.4GHzの1148Mbpsは対応条件を理解して見ることが重要
2.4GHz帯で最大1148Mbpsを掲げるWi-Fiルーターは、規格上おかしな製品ではありません。Wi-Fi 6の40MHz幅・4ストリームなどの条件によって、約1.15Gbpsの最大PHYレートを実現できます。一方、一般的なスマートフォンなどがその4ストリームをそのまま利用できるとは限りません。
574Mbpsと1148Mbpsという数字の差を見ると大きな性能差に感じますが、実際の速度は子機側の対応仕様との組み合わせで決まります。特に1台のスマートフォンで高速通信を求める場合、2.4GHz帯の最大値だけでなく、5GHz・6GHz帯を含めた端末とルーター双方の仕様を見ることが大切です。
Wi-Fiルーターのスペック表では「最大通信速度」と「実際に手持ちの端末で利用できる速度」を分けて考えると、製品選びがかなり分かりやすくなります。


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