キャラクターやフィギュアなどの3Dプリントを見ると、目・服・模様・小物といった細かな部分まで複数の色で造形されている作品があります。このような多色プリントは、必ずしもBlender上で完成品と同じように色を塗ってから印刷しているわけではありません。
現在のFDM方式3Dプリンターでは、スライサー上でモデル表面を色分けする方法、3Dモデルを色ごとのパーツに分割してからスライサーへ読み込む方法、テクスチャ付きモデルの色情報をスライサーへ変換する方法などがあります。Bambu StudioやPrusaSlicerには、モデル表面をブラシや塗りつぶしツールで直接指定するマルチカラー機能も用意されています。
どの方法が使われているかはモデルや制作者によって異なりますが、細かな模様だからといって必ずBlenderで一面ずつ色を設定する必要はありません。ここでは、多色3Dプリントがどの段階で色分けされ、実際にプリンターがどう色を切り替えているのかを順番に解説します。
- 多色3Dプリントは「モデルの色」と「使うフィラメント」を対応させて作る
- 方法1:スライサー上で直接色を塗る
- Bambu Studioでもモデル表面を塗り分けられる
- スライサーでの色塗りは「画像をペイントする」のとは少し違う
- 方法2:Blenderで色ごとのパーツに分けてからスライサーへ渡す
- Blenderで見た目だけ色を塗れば、そのまま印刷されるとは限らない
- 方法3:テクスチャ付きモデルから色分けへ変換する方法もある
- Blenderから3MFで色情報を扱う方法もある
- 実際の印刷ではAMSやMMUなどがフィラメントを交換する
- 細かい色ほどフィラメント交換回数が増える
- 色替えのたびに「パージ」が必要になる
- 多色プリントで大量の「フィラメントのゴミ」が出る理由
- 細かい多色モデルでは印刷時間もかなり長くなる
- 色の境界が高さ方向だけなら自動交換装置がなくても多色化できる
- 同じ高さに複数色がある場合はAMS/MMUなどが必要になりやすい
- 細かな色分けほどスライサーのペイント機能が便利
- 逆にBlenderで分けたほうが楽な色もある
- 「Blenderで塗る」と「スライサーで塗る」の使い分け
- 細かい目や文字をきれいに出すにはノズル径とモデルサイズも重要
- 色を増やせば必ずきれいになるわけではない
- 2026年にはフィラメントを組み合わせて中間色を作る技術も登場している
- 印刷後に人間が塗装しているケースもある
- 動画を見るときはパージタワーやフィラメント排出に注目すると分かりやすい
- 初心者ならスライサーで色を塗る方法から始めると分かりやすい
- より本格的に作るならBlenderとスライサーを使い分ける
- まとめ:細かな色はスライサーで直接塗っているケースも多い
多色3Dプリントは「モデルの色」と「使うフィラメント」を対応させて作る
一般的なFDM方式の3Dプリンターでは、インクジェットプリンターのようにノズルから自由に色を混ぜて表面へ塗装するわけではありません。基本的には、赤い部分には赤いフィラメント、白い部分には白いフィラメントというように、造形する場所ごとに使用する材料を切り替えます。
例えばキャラクターの顔を肌色、目を黒、服を青、靴を白にしたい場合、スライサー側ではモデル表面の各部分へ「フィラメント1」「フィラメント2」といった材料を割り当てます。その情報をもとにプリンターが造形途中でフィラメントを交換します。
そのため、多色プリントの核心は「Blenderで何色に見えるか」よりも、最終的にスライサーが各面をどのフィラメントで印刷するか認識できることにあります。
方法1:スライサー上で直接色を塗る
現在では、細かな色分けをスライサー上で行う方法が非常に一般的です。PrusaSlicerには「Multi-material color painting」があり、モデル表面をブラシやスマートフィルで直接塗り分けられます。Prusa公式でも、モデル表面へ直接マテリアル領域をペイントできる機能として案内されています。[参照:PrusaSlicer]
例えばキャラクターの目だけを黒くしたい場合、3Dモデル全体をBlenderで分割し直さなくても、スライサーへ読み込んだ後に目の部分をクリックしたりブラシでなぞったりして黒いフィラメントを指定できます。
PrusaSlicerではこのマルチマテリアルペイント機能がPrusaSlicer 2.4から搭載され、スマートフィルとブラシストロークによって色分けできるようになりました。[参照:Prusa Research]
Bambu Studioでもモデル表面を塗り分けられる
Bambu Labの3Dプリンターでよく使われるBambu Studioにも、マルチカラー造形用のペイント機能があります。Bambu LabのAMSなど複数フィラメントを切り替える仕組みと組み合わせることで、色ごとに材料を交換しながら造形できます。
そのため、動画で見かける細かなキャラクターの色分けも、元モデルが単色のSTLであっても、Bambu Studio上で後から塗り分けている可能性があります。
特に目、口、服のライン、ロゴなど、表面上の比較的小さな領域であれば、設計ソフトへ戻ってモデル構造を作り直すより、スライサー上のペイント機能を使うほうが早いケースがあります。
スライサーでの色塗りは「画像をペイントする」のとは少し違う
スライサーのペイント機能は、Photoshopなどで画像のピクセルへ色を塗るのとは少し仕組みが異なります。3Dモデルを構成している面や三角形へ、どのフィラメントを使用するかという情報を割り当てています。
例えば黒いブラシで目を描いた場合、その部分へ黒色フィラメントを使用する指示が付与されます。スライス時には、その色指定を実際の造形経路へ変換します。
このため、モデルのポリゴン数や形状によっては非常に細かな境界を塗りにくいことがあります。そうした場合にはBlenderなどで色ごとに形状を分割したほうがきれいに仕上がることもあります。
方法2:Blenderで色ごとのパーツに分けてからスライサーへ渡す
もう一つの代表的な方法が、BlenderやCADの段階で色ごとにモデルを分割する方法です。
例えばフィギュアなら、顔、髪、目、服、靴をそれぞれ別オブジェクトとして作成しておきます。スライサーへ読み込んだ後、それぞれのパーツへ異なるフィラメントを割り当てれば多色プリントできます。
この方法は、色の境界が形状として明確に分かれているモデルと相性が良好です。目が別パーツ、髪が別パーツというように作られていれば、スライサーで細かく手塗りする必要がありません。
Blenderで見た目だけ色を塗れば、そのまま印刷されるとは限らない
Blenderではマテリアル、テクスチャ、Vertex Colorなどを使って3Dモデルへ色を付けられます。しかし、一般的なSTL形式には通常、色やテクスチャ情報が含まれません。
そのためBlenderで非常にきれいに色を塗ったモデルでも、STLとして書き出してスライサーへ読み込むと単色モデルとして扱われることがあります。
色を引き継ぎたい場合は、3MF、OBJ、glTFなど色情報を扱える形式や、利用するスライサーに対応したワークフローが必要です。
方法3:テクスチャ付きモデルから色分けへ変換する方法もある
最近のスライサーでは、Blenderなどで作成したテクスチャ付きモデルを、実際のフィラメント色へ変換する仕組みも発展しています。
Bambu Studioでは2026年のアップデートで「Texture-to-Color Painting」機能が追加され、OBJ、glTF、GLBなどのテクスチャ付きモデルを読み込み、そのテクスチャからマルチカラーペイントへ変換できる機能が提供されています。[参照:Bambu Studio リリース情報]
つまり現在は、「Blenderで色を塗る」か「スライサーで塗る」かの二択ではなく、Blenderで作った色をスライサー側で印刷可能な色指定へ変換するという方法もあります。
Blenderから3MFで色情報を扱う方法もある
3MFは3Dプリント向けに設計されたファイル形式で、STLより多くの情報を保持できます。ジオメトリだけでなく、マテリアルや色などを扱えることが特徴です。
Blender向けにも3MFのインポート・エクスポート機能が提供されており、色、マテリアル、テクスチャ、スライサー向けの情報を扱える拡張機能があります。[参照:Blender Extensions 3MF Import/Export]
ただし、3MFならどのスライサーでもBlender上の見た目を完全にそのまま再現できるとは限りません。使用するプリンターとスライサーがどの情報に対応しているかを確認する必要があります。
実際の印刷ではAMSやMMUなどがフィラメントを交換する
スライサー上で赤、青、白、黒と色分けしただけでは、プリンター本体がそれらのフィラメントを自動で使い分けられなければ多色造形はできません。
Bambu LabではAMS、PrusaではMMUなど、複数のフィラメントを保持して必要に応じて自動交換するシステムがあります。Bambu LabはAMSについて、複数色・複数材料を自動で切り替えるためのシステムとして説明しています。[参照:Bambu Lab AMS]
例えばAMSへ黒、白、赤、青の4本をセットすると、スライサーが指定した場所に応じてプリンターが使用中のフィラメントを抜き、新しい色をロードして続きを印刷します。
細かい色ほどフィラメント交換回数が増える
多色プリントで注意したいのが、色が細かく入り組んでいるほどフィラメント交換回数が増えることです。
例えば1層の中に肌色、黒、白、赤がすべて存在する場合、その層だけでも複数回のフィラメント交換が必要になることがあります。それが数百層続けば、交換回数は非常に多くなります。
そのため、見た目が小さなフィギュアでも印刷時間が十数時間から数十時間になるケースがあります。
色替えのたびに「パージ」が必要になる
1本のノズルで異なる色のフィラメントを交互に使う場合、ノズル内部には前の色の樹脂が残っています。
そこで新しい色へ交換した後、前の色が混ざらなくなるまで一定量のフィラメントを押し出します。これをパージと呼びます。
Prusaのマルチマテリアルシステムでも、色変更時にはノズル内に残った材料を排出するパージ処理が必要で、ワイプタワーなどを利用します。[参照:Prusa Multi-material slicing]
多色プリントで大量の「フィラメントのゴミ」が出る理由
Bambu Labのマルチカラープリント動画を見ると、本体の横や後ろから小さなフィラメントの塊が大量に排出されることがあります。
これは色変更時のパージによるものです。黒から白へ交換する場合、ノズル内に黒が残ったまま白を押し出すと灰色になってしまうため、十分に白だけになるまで材料を排出します。
細かな色分けを多用するほどパージ回数が増えるため、本体に使用するフィラメントより廃棄されるフィラメントが多くなるケースさえあります。
細かい多色モデルでは印刷時間もかなり長くなる
フィラメント交換では、現在の材料を引き戻し、新しい材料を送り、ノズルへロードし、パージしてから印刷を再開します。
この処理が何百回も発生すれば、単色で数時間のモデルが多色では十数時間以上になることがあります。
そのため、スライサーで色を塗るときには見た目だけでなく、「この色分けによって何回フィラメント交換が発生するか」も確認することが重要です。
色の境界が高さ方向だけなら自動交換装置がなくても多色化できる
単一ノズル・単一フィラメントのプリンターでも、特定の層で一度だけ色を変える程度ならマルチカラー造形は可能です。
例えば看板の土台を黒で造形し、上の文字部分だけ白にする場合、文字が始まる高さでプリンターを停止して手動でフィラメントを交換できます。
PrusaSlicerでも単一エクストルーダーのプリンターについて、指定レイヤーでフィラメント交換を行う基本的な多色印刷に対応しています。[参照:PrusaSlicer]
同じ高さに複数色がある場合はAMS/MMUなどが必要になりやすい
例えば顔の同じ高さに肌色の頬と黒い目と白い白目が存在する場合、1つの層の途中で何度も色を切り替えなければなりません。
手動でも理論上は可能ですが、数百回のフィラメント交換を人間が行うのは現実的ではありません。
そのためフィギュアのような細かな多色造形では、AMS、MMU、複数エクストルーダーなどの自動マルチマテリアル機構を利用するのが一般的です。
細かな色分けほどスライサーのペイント機能が便利
フィギュアの服や顔など、複雑な曲面へ色を付ける場合には、Blenderで色ごとのパーツを一から作るより、スライサーのペイント機能のほうが手軽なことがあります。
PrusaSlicerではスマートフィル機能を利用でき、モデルの形状を利用して領域をまとめて塗れます。ブラシで手作業する方法と組み合わせることで、かなり細かな指定が可能です。[参照:PrusaSlicer]
単純なキャラクターモデルなら、「STLを読み込む→フィラメントを4色登録する→スライサーで目・服・髪を塗る→スライスする」という流れでも多色データを作れます。
逆にBlenderで分けたほうが楽な色もある
色の境界がモデル構造そのものと一致している場合には、Blenderで別オブジェクトとして作っておくほうが効率的です。
例えばキャラクターの髪全体が黒、服全体が赤、靴全体が白というモデルなら、それぞれを別パーツにしてスライサー側で色を割り当てるだけで済みます。
スライサー上で何百面も塗りつぶす必要がなく、後から色を変更するときも「髪=フィラメント2」という設定を変更するだけなので管理しやすくなります。
「Blenderで塗る」と「スライサーで塗る」の使い分け
| 方法 | 向いているケース | 特徴 |
|---|---|---|
| スライサーで直接ペイント | 目・模様・服の一部など | 手軽で修正しやすい |
| Blenderでパーツ分割 | 髪・服・靴など形状と色が一致 | 境界を正確に作りやすい |
| Blenderのテクスチャから変換 | 複雑な既存テクスチャ | 対応ソフト・形式が必要 |
| レイヤー単位で色変更 | 看板・文字・積層方向の色分け | AMSなしでも可能 |
実際の制作では、これらを組み合わせることもあります。
細かい目や文字をきれいに出すにはノズル径とモデルサイズも重要
スライサー上で非常に細かく色を塗れても、プリンターの物理的な解像度を超える模様は再現できません。
一般的な0.4mmノズルでは、極端に細い線や小さな文字は潰れる可能性があります。より細かな表現が必要なら0.2mmノズルなどを使う方法があります。
またモデルそのものを少し大きく印刷すると、一つ一つの色領域も大きくなるため再現しやすくなります。
色を増やせば必ずきれいになるわけではない
例えば黒、白、赤、青、黄色、肌色の6色を使えば華やかになりますが、その分だけフィラメント交換とパージが増えます。
見た目では似た色を1色に統合しても十分なことがあります。薄い赤と濃い赤を別フィラメントにせず、同じ赤として印刷するだけで時間と廃棄量を大幅に減らせる場合があります。
多色モデルを作るときは、完成イメージだけでなく使用フィラメント数と交換回数とのバランスを取ることが重要です。
2026年にはフィラメントを組み合わせて中間色を作る技術も登場している
従来のマルチカラーFDMでは「4本のフィラメントなら基本4色」という考え方が中心でしたが、現在は複数色を細かなパターンで組み合わせて視覚的な中間色を作る技術も発展しています。
Prusa Researchは2026年にColorMixを公開し、複数フィラメントを利用して多数の色調を表現する仕組みをPrusaSlicerなどへ導入しています。[参照:Prusa Research ColorMix]
Bambu Studioでも色混合機能の開発が進んでおり、マルチカラーFDMの表現方法は従来より広がっています。
印刷後に人間が塗装しているケースもある
YouTubeやSNSで見かける非常に精密なフィギュアが、すべてマルチカラープリントとは限りません。
単色または数色で3Dプリントした後、サーフェイサー、アクリル塗料、エアブラシなどを使って人間が塗装している作品も多くあります。
特にグラデーション、瞳の細かな描写、肌の陰影、金属表現などは、フィラメントの色替えだけより後から塗装したほうが自然に仕上げやすい場合があります。
動画を見るときはパージタワーやフィラメント排出に注目すると分かりやすい
作品がAMSやMMUによるマルチカラープリントか判断したい場合は、印刷物だけでなく周囲も見ると分かりやすくなります。
印刷途中でフィラメントを何度も交換している、横にワイプタワーが作られている、プリンターから色付きの小さな樹脂の塊が排出されている場合は、自動色替えによるマルチカラープリントの可能性が高いです。
逆に造形中は単色で、完成後に色が増えている場合は、後加工による塗装の可能性があります。
初心者ならスライサーで色を塗る方法から始めると分かりやすい
すでにBambu LabやPrusaなどのマルチカラー対応機を使っているなら、最初からBlenderで複雑な色分けモデルを作る必要はありません。
まず単純なSTLをスライサーへ読み込み、2~4色程度登録し、ペイントツールで一部分だけ色を変更して印刷してみると仕組みを理解しやすくなります。
例えば白い猫のモデルを読み込み、目だけ黒、鼻だけピンクに塗る程度なら、マルチカラー造形の練習として分かりやすい題材です。
より本格的に作るならBlenderとスライサーを使い分ける
複雑なオリジナルモデルを作るようになると、Blenderとスライサーの役割を分けると効率が良くなります。
Blenderでは形状や大きな色分けの境界を設計し、スライサーでは小さな模様や実際のフィラメント割り当てを調整するという方法です。
さらにテクスチャから色分けへ変換できる機能を利用すれば、Blender上で作ったカラー表現をマルチカラーFDMへ持ち込む方法も選択できます。
まとめ:細かな色はスライサーで直接塗っているケースも多い
3Dプリンターでキャラクターなどの細かな多色造形を行う場合、Blenderで完成品と同じように色を塗ってから必ずスライサーへ渡すわけではありません。
現在のBambu StudioやPrusaSlicerには、3Dモデルの表面へ直接フィラメント色を割り当てるペイント機能があります。PrusaSlicerではスマートフィルやブラシを利用したマルチマテリアルペイントが正式に提供されています。[参照:PrusaSlicer]
目や模様など細かな部分はスライサーで手作業またはスマートフィルによって塗り分け、髪や服など大きな色分けはBlender側で別パーツとして作る、という組み合わせが実用的です。
さらに現在のBambu Studioでは、テクスチャ付きOBJ・glTF・GLBからマルチカラー用のペイントへ変換する機能も登場しており、Blenderなどで作った色情報を利用する方法もあります。[参照:Bambu Studio]
実際の印刷時にはAMSやMMUなどがスライサーの色指定に従ってフィラメントを自動交換します。ただし細かく色を分けるほどフィラメント交換回数、パージによる廃棄材料、印刷時間が増えます。そのため、モデル制作では「どこで色を付けるか」だけでなく、何色使うか、どの程度細かく分割するかまで含めて設計することが、多色3Dプリントをきれいかつ効率的に仕上げるポイントです。


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