ニコンはミラーレス市場で本当に低迷している?国内シェア4位の背景とZシリーズの巻き返し戦略を解説

デジタルカメラ

かつて一眼カメラの代表的メーカーとしてキヤノンと並んで語られることが多かったニコン。ミラーレス時代になり、ソニーやキヤノン、富士フイルムなどの存在感が増したことで、国内販売ランキングを見て「ニコンは低迷しているのでは?」と感じる人もいるでしょう。しかし、カメラ市場を考えるときは、ある月の販売台数シェアだけでメーカー全体の強さを判断しないことが重要です。

実際、BCNランキングでは2025年1月のミラーレス一眼メーカー別販売台数シェアでソニー29.7%、キヤノン26.3%、富士フイルム15.9%となり、富士フイルムがニコンを抜いて3位に浮上しました。一方、その後はニコン製品が個別カテゴリーで大きく順位を伸ばした時期もあります。つまり「4位になった=ニコンのカメラ事業そのものが衰退している」と単純化するのは適切ではありません。[参照]

ニコンが国内シェア4位といわれた背景

まず理解しておきたいのが、カメラの「シェア」にはさまざまな集計方法があることです。国内なのか世界なのか、販売台数なのか売上金額なのか、ミラーレスだけなのかレンズ交換式カメラ全体なのかによって順位は変わります。

例えばBCNランキングの2025年1月のデータでは、ミラーレス一眼のメーカー別販売台数シェアで富士フイルムが15.9%となりニコンを逆転しました。このデータだけを見るとニコンは4位ですが、これは特定期間における国内実売データを基にした順位です。永続的に「国内4位」が確定しているという意味ではありません。

さらに販売台数ランキングでは、比較的購入しやすい価格帯の製品が非常に強くなります。高価格なフルサイズ機を中心に販売するメーカーと、エントリークラスを大量に販売するメーカーでは、台数シェアだけを比較したときの見え方が大きく異なります。

ミラーレスへの移行でニコンが苦戦して見えた理由

ニコンを語るうえで大きな転換点になったのが、一眼レフからミラーレスへの市場移行です。一眼レフ時代にはFマウントという巨大なレンズ資産と長年のブランド力がありましたが、フルサイズミラーレスではソニーが先行しました。ユーザーが新しいシステムへ移行する時期には、ボディだけでなく交換レンズのラインアップも購入判断を大きく左右します。

ニコンは2018年からZマウントのフルサイズミラーレスを本格展開しました。そのため、すでにミラーレス市場で地位を築いていた競合に対して、ボディとレンズの両方を短期間で充実させる必要がありました。一眼レフで圧倒的な知名度を持っていたことが、そのままミラーレスの販売台数に移行するわけではなかったのです。

またスマートフォンの普及によって、カメラ市場そのものも変化しました。日常写真ならスマートフォンで十分というユーザーが増え、レンズ交換式カメラにはスマートフォンでは得にくい高画質、高速AF、望遠撮影、作品づくり、動画制作など、より明確な価値が求められるようになっています。

ソニー・キヤノン・富士フイルムにはそれぞれ違う強みがある

現在のミラーレス市場が興味深いのは、各メーカーの得意分野がかなり異なる点です。ソニーはフルサイズミラーレスへの早期参入に加え、αシリーズと豊富な交換レンズ、動画・Vlog向け製品など幅広い選択肢を持っています。

キヤノンはEOSブランドの知名度に加え、初心者向けからプロ向けまで幅広いラインアップを展開しています。販売台数を競う市場では、価格と性能のバランスに優れたエントリー・中級モデルを持っていることが大きな強みになります。

富士フイルムはAPS-Cを中心としたXシリーズで独自の立ち位置を築いています。クラシカルなデザインやフィルムシミュレーションなど、スペックだけでは比較しにくい「カメラを持つ楽しさ」や撮影体験を商品価値にしている点が特徴的です。

そのためニコンが競争しているのは単純な画質だけではありません。価格、サイズ、デザイン、動画性能、交換レンズ、SNSとの親和性などを含めた総合的なユーザー体験で選ばれる必要があります。

実はニコンには巻き返しを示す動きもある

「ニコンはずっと4位のままなのか」という見方に対して興味深いのが、2025年4月のフルサイズミラーレス市場です。BCNランキングによると、Z5II発売後の同月、ニコンはフルサイズミラーレスの販売台数で33.4%を獲得し、月次で初めてトップシェアとなりました。ソニーは32.1%で、わずかな差ながらニコンが上回っています。[参照]

Z5IIはZ9やZ8と同じEXPEED 7画像処理エンジンを搭載し、被写体検出など上位モデル由来の機能をより購入しやすいクラスへ展開した製品です。高性能な技術をフラッグシップだけに限定せず、ミドルクラスやエントリー寄りのフルサイズへ下ろしていく戦略は、販売台数を伸ばすうえで重要です。[参照]

APS-Cでも動きがあります。BCNランキングの2026年5月集計ではZ50IIがミラーレス一眼のシリーズ別販売台数ランキングで3位となり、ニコン製品として過去3年間で初めてTOP3入りしました。さらに2026年7月にもZ50IIはTOP10に入っています。したがって「ニコン製品が消費者から選ばれなくなった」という状況ではありません。[参照]

ニコンの強みはZ9から下位モデルへ技術を展開できること

現在のZシリーズで重要なのが、フラッグシップZ9で培った技術をZ8、Z6III、Zf、Z50II、Z5IIなどへ展開していることです。ニコン自身も決算説明資料で、Z9の先進技術を下位モデルへ展開して中核機のラインアップを強化する方針を示しています。

これは実際の購入者にとって大きなメリットがあります。例えば最上位機を購入できないユーザーでも、被写体検出やAFなど上位モデルで培われた技術の一部を、より手頃なボディで利用できるからです。

2026年5月にZ50IIが販売ランキング上位へ入ったことを考えても、ニコンが今後台数シェアを伸ばすには、こうした中価格帯・入門クラスの充実がポイントになるでしょう。高級機が評価されるだけでなく「最初の1台としてニコンを選ぶ人」を増やせるかが重要になります。

RED買収と動画分野はニコンの新しい武器になる可能性がある

もう一つ見逃せないのが動画分野です。ニコンは2024年に米国のシネマカメラメーカーRED Digital Cinemaを完全子会社化しました。これは単に静止画用カメラのシェア争いだけでなく、映像制作市場まで事業領域を広げようとしていることを意味します。

ニコンの2025年の統合報告書では、REDとの技術共有やZマウント対応製品、動画分野の強化によって中高級機市場のシェア拡大と安定収益を目指す方向性が示されています。[参照]

スマートフォンが日常写真を担う時代では、プロ・ハイアマチュア・映像クリエイターなど、高い撮影性能を必要とする市場の重要性が増しています。REDとの連携がZシリーズにも還元されれば、ニコン独自の強みになる可能性があります。

「販売台数シェア」と「カメラ事業の強さ」は分けて考える

市場を見る際には、販売台数ランキングだけでなく事業規模も確認しておく必要があります。ニコンの2026年3月期における映像事業の売上収益は約2,900億円でした。映像事業そのものがなくなりそうな規模というわけではありません。[参照]

一方で安心材料だけでもありません。ニコンによれば2026年3月期の映像事業は、製品構成の変化による平均販売単価の低下、競争激化に伴う販促費増加、関税などの影響を受けて減収減益となりました。つまり競争環境が厳しいことも事実です。[参照]

販売台数を増やすために低価格帯を強化すると平均単価が下がりやすく、高級機だけを重視すると台数シェアを伸ばしにくいという難しさがあります。メーカーにとって重要なのは「ランキングで何位か」だけではなく、販売数量と利益を両立できる製品構成を作ることです。

ニコンがさらにシェアを伸ばすためのポイント

今後の鍵の一つは、Z50IIやZ5IIのように上位モデルの技術を購入しやすい価格帯へ展開することです。初めてレンズ交換式カメラを購入する層がZマウントに入れば、その後の交換レンズや上位ボディへの買い替えにもつながります。

もう一つは交換レンズの選択肢です。カメラはボディ単体ではなくシステムとして購入されます。標準ズーム、単焦点、望遠、超望遠、マクロなどを予算に応じて選べる環境が整っているほど、新規ユーザーにとって参入しやすくなります。

さらに動画・Vlog・シネマ領域への対応、スマートフォンやクラウドとの連携、若年層にも届く製品デザインやマーケティングなども重要でしょう。ニコン自身も若い世代を含む新規顧客の獲得を映像事業の方向性として示しています。[参照]

まとめ:ニコンは「低迷して終わるメーカー」ではなくミラーレス時代の再構築途上と見るべき

ニコンが特定時期の国内ミラーレス販売台数シェアで4位になったことは事実として確認できます。しかし、その数字だけからニコン全体が衰退していると結論付けるのは早計です。2025年4月にはZ5IIの投入によってフルサイズミラーレスで月次首位を獲得し、2026年にはZ50IIもシリーズ別ランキング上位に入っています。

一眼レフ時代とは市場構造そのものが変わり、現在はソニー、キヤノン、富士フイルムなど各社が異なる強みを持っています。その中でニコンはZ9由来の技術を中級・普及モデルへ展開するとともに、REDとの連携によって動画・シネマ領域にも力を入れています。

ニコンの今後を判断するなら、一時点のメーカー順位だけでなく、Z50IIやZ5IIなど普及価格帯の販売動向、Zマウントレンズの拡充、動画分野への投資、そして映像事業の収益性まで継続して見ることが大切です。 一眼レフ時代の「キヤノンかニコンか」という二強構造にそのまま戻るとは限りませんが、ミラーレス市場で巻き返す材料は十分にあり、今後の製品展開次第で勢力図が再び変わる可能性があります。

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