なぜ日本メーカーはアクションカメラを作らなくなった?ソニー撤退後にDJI・Insta360が強くなった理由を解説

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アクションカメラ売り場を見ると、DJIやInsta360といった中国系メーカーの存在感が非常に大きくなっています。一方、日本にはソニー、キヤノン、ニコン、パナソニック、リコーなど世界的なカメラメーカーがあるにもかかわらず、現在の一般消費者向けアクションカメラ市場では日本ブランドをほとんど見かけません。

ただし、「日本メーカーにはアクションカメラを開発する技術がない」「最初から参入していなかった」という理解は正しくありません。ソニーはかつて「アクションカム」という専用シリーズを展開し、リコーもWG-M1、WG-M2というアクションカメラを発売していました。現在は、それらが生産完了となり、新しい製品が継続投入されていないという状況です。

なぜこうなったのかについて各社が「この理由で撤退した」とすべてを公式に説明しているわけではないため、断定はできません。しかし、現在の市場構造、競争の激しさ、スマートフォンとの差別化、アプリやAIを含む開発負担、日本メーカーの製品戦略を見ていくと、再参入しにくい理由はかなり見えてきます。

  1. 日本メーカーも以前は本格的なアクションカメラを作っていた
  2. リコーもWGシリーズでアクションカメラへ参入していた
  3. 現在強いDJIとInsta360はいずれも中国・深圳に強い基盤を持つ
  4. アクションカメラは「カメラ本体を作れば終わり」の商品ではなくなった
  5. DJIはアクションカメラ単体ではなく周辺製品までまとめて開発できる
  6. Insta360は「撮影後に構図を決める」という新しい価値も作った
  7. 日本メーカーが今から参入するとソフトウェア開発にも大きな投資が必要
  8. アクションカメラ市場そのものが簡単に儲かる市場とは限らない
  9. 年間数百万台規模でも競争が激しければ再参入は慎重になる
  10. スマートフォンの進化もアクションカメラ市場を難しくしている
  11. 日本メーカーは得意なカメラ分野へ経営資源を集中している
  12. ソニーが再参入すれば強そうなのに、なぜ作らないのか
  13. FDR-X3000が評価されていてもシリーズ継続とは別の話
  14. 「中国メーカーだから安い」だけで現在の強さを説明するのは難しい
  15. 中国・深圳の製造エコシステムとアクションカメラは相性がいい
  16. アクセサリーの多さも新規参入メーカーにとって壁になる
  17. 量販店での売り場確保や海外マーケティングも必要
  18. 「中国メーカーがシェアを占める」という表現には少し注意が必要
  19. 日本メーカーが今後復活する可能性はある?
  20. 技術力の差というより「どの市場に投資するか」の違いが大きい
  21. 具体例:ソニーが今から新型アクションカムを作るとしたら
  22. 具体例:高画質だけでは購入理由にならない場合がある
  23. 日本メーカーが存在しないことを「技術の敗北」と考える必要はない
  24. まとめ:日本メーカーが作れないのではなく、競争の激しい市場へ再投資する理由が小さくなっている

日本メーカーも以前は本格的なアクションカメラを作っていた

まず押さえておきたいのは、日本メーカーがアクションカメラを作れなかったわけではないという点です。その代表がソニーです。

ソニーは「アクションカム」の名称で数多くのモデルを展開していました。代表的なFDR-X3000は4K撮影に対応し、ソニーがハンディカムで培った「空間光学ブレ補正」をアクションカメラ向けに新規開発して搭載していました。ZEISSレンズ、Exmor R CMOSセンサー、BIONZ Xなど、当時のソニーの映像技術を小型ボディへ投入した製品です。現在、ソニー公式サイトではFDR-X3000について「生産完了」と表示されています。[参照:ソニー「FDR-X3000/X3000R」]

フルHDモデルのHDR-AS300も同じく空間光学ブレ補正を搭載したアクションカムでしたが、現在は生産完了です。[参照:ソニー「HDR-AS300/AS300R」]

リコーもWGシリーズでアクションカメラへ参入していた

日本メーカーではリコーもアクションカメラを開発していました。RICOH WG-M1は2014年10月に登場し、ハウジングなしで水深10mの撮影に対応する小型・軽量の防水アクションカメラでした。

さらに2016年3月にはRICOH WG-M2が登場しています。WG-M2は超広角約204度の撮影と4K動画に対応しており、リコー自身も公式のWGシリーズ史で「カメラメーカーならではのこだわり」を盛り込んだ製品として紹介しています。[参照:RICOH IMAGING「WG History」]

つまり現在の状況は、「日本企業がアクションカメラという商品を思いつかなかった」のではなく、一度は複数の日本企業が参入したものの、現在まで継続して新製品を投入するメーカーがほとんど残っていないと表現するほうが正確です。

現在強いDJIとInsta360はいずれも中国・深圳に強い基盤を持つ

現在のアクションカメラ市場で特に目立つのがDJIとInsta360です。DJIは中国・深圳に本社を置く企業で、ドローンだけでなくOsmo Actionシリーズ、Osmo 360シリーズ、Osmo Pocketシリーズ、ジンバル、マイクなど映像制作機器を幅広く展開しています。[参照:DJI「About Us」]

DJIは自社紹介の中で、深圳に本社を置くことにより、サプライヤー、原材料、人材へ直接アクセスできる環境を事業上の強みとして説明しています。カメラ、バッテリー、通信、ディスプレイ、電子部品など多数の部品を小型筐体へ詰め込むアクションカメラでは、このような製造エコシステムとの距離は競争力につながり得ます。

Insta360を運営するArashi Visionも、中国・深圳に拠点を置く企業です。公式のプライバシーポリシーにも中国広東省深圳市の所在地が記載されています。[参照:Insta360公式プライバシーポリシー]

アクションカメラは「カメラ本体を作れば終わり」の商品ではなくなった

現在のアクションカメラで競争するには、単に小型カメラを設計するだけでは足りません。画質だけなら日本のカメラメーカーにも豊富な技術がありますが、現代のアクションカメラにはそれ以外の要素が大量に求められます。

具体的には、高性能な電子手ブレ補正、水平維持、防水、耐衝撃性、発熱管理、高速起動、タッチパネル、音声処理、無線通信、スマートフォンアプリ、クラウド連携、AI編集、自動被写体追跡、縦動画対応、ライブ配信、ワイヤレスマイク連携などです。

さらにヘルメット、バイク、自転車、胸部、車、サーフボードなどへ取り付けるマウントやバッテリー類まで含めたアクセサリーエコシステムが求められます。現在のアクションカメラは、小型デジタルカメラというより「ハードウェア+ソフトウェア+アプリ+アクセサリー」のプラットフォームに近くなっています。

DJIはアクションカメラ単体ではなく周辺製品までまとめて開発できる

DJIの強みを考えると、この構造がよく分かります。2026年時点のDJI公式ラインアップにはOsmo Action 6、Osmo Action 5 Pro、Osmo Action 4などのアクションカメラに加え、360度カメラ、Pocketシリーズ、スマートフォン用ジンバル、DJI Micシリーズなどが並んでいます。[参照:DJI「Handheld Cameras & Gimbals」]

例えばカメラで撮影し、DJI製マイクで音声を収録し、スマートフォンアプリで編集する、といった製品間連携を作れます。一つの技術を複数カテゴリーへ展開することもできます。

日本メーカーが新たにアクションカメラ一機種だけを開発する場合、すでにこのエコシステムを構築している企業と正面から競争する必要があります。単に「日本メーカーならもっと高画質なものを作れる」というだけでは十分な差別化になりにくくなっています。

Insta360は「撮影後に構図を決める」という新しい価値も作った

もう一つ重要なのが360度カメラです。従来型カメラでは撮影時に画角を決めますが、360度カメラでは周囲を広範囲に撮影し、あとからアプリ上で視点や画角を選ぶという使い方ができます。

この方式は、自撮り棒を使った第三者視点のような映像、バイクやスキーなど撮影中にカメラ操作が難しい場面と非常に相性があります。

つまり競争軸そのものが「どのメーカーの4K映像が一番きれいか」だけではなくなりました。撮影後のリフレーミング、自動編集、SNSへの共有まで含む体験全体が商品の価値になっています。

日本メーカーが今から参入するとソフトウェア開発にも大きな投資が必要

日本の大手カメラメーカーが現在から新しいアクションカメラを投入する場合、本体だけなら開発できても、それで競争が終わるわけではありません。

iPhoneとAndroidのアプリを継続的に更新し、新しいOSへ対応しながら、AI編集や動画転送、SNS向けテンプレート、ファームウェア更新などを長期間提供する必要があります。

発売後にもソフトウェア開発費が発生し続けるため、販売台数が十分確保できなければ事業として成立させにくくなります。既にユーザーとソフトウェア資産を持つDJI、Insta360、GoProへ後発で挑戦するハードルは高いと考えられます。

アクションカメラ市場そのものが簡単に儲かる市場とは限らない

中国メーカーが目立つため、「ものすごく成長していて、参入すれば簡単に利益を出せる市場」のように見えるかもしれません。しかし実際の競争はかなり厳しいことが分かります。

アクションカメラを世界的に普及させた米国GoProの2025年実績を見ると、売上高は約6億5,200万ドルで前年比19%減、カメラ販売台数は180万台で前年比25%減でした。同社自身も世界的な競争激化について説明しています。[参照:GoPro 2025年度報告資料]

GoProの2026年年次報告書では、デジタルイメージング市場について「highly competitive」とし、競争が激化していることをリスクとして説明しています。競合としてInsta360のArashi Vision、DJI、ソニー、キヤノン、ニコン、リコーなども挙げています。[参照:GoPro Annual Report 2025]

この実績を見るだけでも、アクションカメラは「作れば大量に売れる」ほど容易なカテゴリーではないことが分かります。

年間数百万台規模でも競争が激しければ再参入は慎重になる

大企業が新しい製品カテゴリーへ投資する場合、技術的に作れるかどうかだけではなく、「投資した人員と資金に見合う利益が期待できるか」が重要です。

GoProは2025年に180万台のカメラを販売していますが、それでも売上高は前年比19%減となりました。つまり一定の世界販売規模を持つ有名ブランドでさえ、競争環境によって売上や市場シェアへ大きな影響を受けます。

すでにアクションカメラ事業を終了している日本メーカーにとって、ここへ再び研究開発費、広告費、アプリ開発費、アクセサリー開発費を投入するかどうかは慎重な経営判断になるでしょう。

スマートフォンの進化もアクションカメラ市場を難しくしている

アクションカメラの競争相手は他社のアクションカメラだけではありません。現在ではスマートフォン自体が非常に高性能な動画カメラになっています。

旅行、子どもの撮影、街歩き、日常のVlog程度なら、スマートフォンだけで十分という人も多くいます。そのため専用アクションカメラを購入する人には、「スマートフォンでは撮れない映像」が求められます。

例えばヘルメット装着、水中撮影、バイク搭載、激しい手ブレ、360度撮影といった用途です。つまり専用機の市場は明確に存在する一方、普通の小型動画カメラを作るだけではスマートフォンとの差別化が難しくなっています。

日本メーカーは得意なカメラ分野へ経営資源を集中している

日本のカメラメーカーが映像機器そのものから撤退したわけではありません。むしろ現在もミラーレスカメラ、高級コンパクトカメラ、業務用映像機器などでは日本メーカーが積極的に製品を投入しています。

つまり「カメラを開発しなくなった」というより、メーカーごとに利益やブランド力を発揮しやすい市場へ投資先を選んでいると考えるほうが自然です。

レンズ交換式カメラなら、長年蓄積した交換レンズ群、AF技術、大型イメージセンサー、高画質処理、プロ向けサポートなどを差別化に利用できます。一方、アクションカメラへ再参入すると、すでに非常に強い専業・準専業メーカーとの競争になります。

ソニーが再参入すれば強そうなのに、なぜ作らないのか

特に疑問を持たれやすいのがソニーです。ソニーはイメージセンサー、カメラ、映像処理、スマートフォン、音響などアクションカメラに必要な技術を数多く持っています。

さらにFDR-X3000は空間光学ブレ補正を搭載するなど、当時として特徴の強い製品でした。そのため技術的には「現在のソニーなら高性能なアクションカムを作れるのでは」と考えるのは自然です。

しかし、技術的に作れることと、事業として再参入することは別問題です。現在のソニー公式アクションカム製品ページではFDR-X3000やHDR-AS300などが生産完了となっており、現行の後継アクションカムは確認できません。[参照:ソニー「アクションカム」]

FDR-X3000が評価されていてもシリーズ継続とは別の話

旧製品に今でもファンがいるからといって、新型を発売すれば必ず事業として成功するとは限りません。

例えば現代版FDR-X3000を作るなら、4K高フレームレート、大型ディスプレイ、強力な電子手ブレ補正、水平維持、高性能マイク、防水、USB-C高速転送、クラウド・スマホアプリ、SNS向け編集など、現在の競合製品と比較される機能が必要になります。

さらにDJIやInsta360が短い周期で新製品とソフトウェアを投入する環境では、一度優秀なモデルを発売するだけではなく継続的な更新が必要です。この点が、かつてアクションカメラを作っていたメーカーが簡単には戻りにくい理由の一つと考えられます。

「中国メーカーだから安い」だけで現在の強さを説明するのは難しい

中国メーカーの強さについて、「単に人件費が安いから」「安売りしているから」と説明されることがあります。しかし、現在のDJIやInsta360の上位製品を見ると、それだけでは説明できません。

DJIはアクションカメラ、ドローン、カメラジンバル、マイクなど複数の高度な撮影機器を開発しています。DJI自身も研究開発への継続的な取り組みと、深圳における部品供給・人材へのアクセスを強みとして説明しています。[参照:DJI「About DJI」]

現在の競争力は価格だけではなく、製品投入速度、ハードウェア設計、電子手ブレ補正、アプリ、AI、マウントシステム、周辺機器まで含めて考える必要があります。

中国・深圳の製造エコシステムとアクションカメラは相性がいい

アクションカメラは小さい本体へ多くの電子部品を詰め込む商品です。イメージセンサー、SoC、液晶、タッチパネル、バッテリー、無線モジュール、マイク、防水部品、基板などを組み合わせながら、新機種を短期間で開発する必要があります。

深圳周辺には電子機器関連のサプライチェーンが集積しています。DJIが自ら、深圳に本社を置くことでサプライヤーや原材料、人材へ直接アクセスできることを強みとして挙げている点は、この市場を考えるうえで重要です。[参照:DJI「About Us」]

部品選定から試作、量産、改良までの速度が重要な製品カテゴリーでは、この地理的・産業的な環境が競争力へつながる可能性があります。

アクセサリーの多さも新規参入メーカーにとって壁になる

アクションカメラは本体だけ購入して終わる商品ではありません。自撮り棒、三脚、バイクマウント、ヘルメットマウント、胸部マウント、水中用品、追加バッテリー、充電器、外部マイクなど、多数のアクセサリーが利用されます。

すでに特定ブランドのマウントやバッテリーを大量に持っているユーザーは、次回も同じブランドを選びやすくなります。これがエコシステムによる囲い込みです。

新しく参入する日本メーカーは、カメラ本体だけでなく、こうしたアクセサリーまである程度揃えなければなりません。それだけ開発・在庫・販売の負担も増えます。

量販店での売り場確保や海外マーケティングも必要

アクションカメラは世界市場で販売される商品です。新たに参入するなら、日本国内だけでなく北米、欧州、アジアなどでブランドを認知してもらう必要があります。

YouTubeクリエイターへの製品提供、スポーツイベント、SNS広告、レビュー施策、各国の販売店との契約など、製品開発以外にも大きな費用がかかります。

GoProの2025年度資料でも、販売チャネル、マーケティング、ソフトウェア開発、インフラへの投資が必要であることが説明されています。アクションカメラは本体の原価だけを見て採算を判断できる事業ではありません。[参照:GoPro Annual Report 2025]

「中国メーカーがシェアを占める」という表現には少し注意が必要

DJIとInsta360が現在非常に目立つことは確かですが、「アクションカメラ市場のほぼすべてを中国メーカーが占めている」とまで断定する場合には、市場調査会社による同一条件のシェア統計が必要です。

アクションカメラの代表的ブランドには、現在も米国企業のGoProがあります。したがって大きな構図としては、中国系のDJI・Insta360、米国のGoProなどが激しく競争する一方、日本企業の存在感が以前より大きく低下したと表現するのが適切でしょう。

実際、GoPro自身も2025年度報告で世界的な競争環境の激化による市場シェア低下について言及しており、Insta360やDJIを競合として明記しています。[参照:GoPro 2025年度報告]

日本メーカーが今後復活する可能性はある?

可能性がゼロとはいえません。ソニーをはじめとする日本メーカーには、イメージング、光学、映像処理、防水設計などアクションカメラへ応用できる技術があります。

ただし現在と同じ形の4Kアクションカメラをそのまま作ってDJI・Insta360・GoProと価格競争するだけでは、再参入するメリットは小さいかもしれません。

もし復活するとすれば、大型センサーによる高画質、圧倒的な低照度性能、特殊な光学式手ブレ補正、業務用途、他のカメラとの連携など、既存製品とは明確に違う価値を打ち出せるかどうかがポイントになるでしょう。ただし、これは今後の可能性についての推測であり、各メーカーが新型アクションカメラの発売を公式発表していない限り、製品化を前提にはできません。

技術力の差というより「どの市場に投資するか」の違いが大きい

この問題を考える際に最も避けたいのが、「中国の技術が上がったから日本にはもう作れない」「日本メーカーが怠けたから負けた」という単純な説明です。

確かに中国企業の技術力やブランド力は大きく向上しています。一方、日本企業にも高い映像技術があります。そして実際にソニーやリコーは高性能なアクションカメラを製品化していました。

現在の違いは、技術力だけでなく、どの製品カテゴリーへ人員と研究開発費を集中させるかという経営戦略の影響が大きいと考えられます。中国勢はアクション・360度・ジンバル・スマホ編集といった新しい動画撮影体験へ継続投資し、日本の主要カメラメーカーはミラーレスや業務映像など別の強みを持つ分野へ投資しています。

具体例:ソニーが今から新型アクションカムを作るとしたら

仮にソニーが新型アクションカムを開発するとします。カメラ部分だけなら、センサー、画像処理、レンズ、マイク、手ブレ補正など多くの技術資産を利用できるでしょう。

しかし商品として競争するには、それに加えてiOS・Androidアプリ、AI編集、クラウド、SNS共有、360度水平維持、防水、交換レンズカバー、高速転送、ワイヤレスマイク接続、多数のマウントなどが必要になります。

さらに翌年にはDJIやInsta360が新型を発売する可能性があります。そこで再びセンサー、バッテリー、手ブレ補正、AI機能などを更新する必要があります。これは「カメラを一台設計する」よりはるかに大きな継続事業です。

具体例:高画質だけでは購入理由にならない場合がある

例えば日本メーカーが競合より少し高画質なアクションカメラを発売しても、スマートフォンへの動画転送に時間がかかり、編集アプリが使いにくく、マウントの種類も少なければ、SNSへ毎日投稿するユーザーに選ばれない可能性があります。

反対に画質差が小さくても、撮影後すぐスマートフォンへ転送し、AIが人物を追跡して縦動画を自動生成し、そのままSNSへ投稿できる製品なら、ユーザーにとって便利です。

現在のアクションカメラ市場では、こうした「撮った後」の体験まで製品競争に含まれています。この点は従来のデジタルカメラ市場との大きな違いです。

日本メーカーが存在しないことを「技術の敗北」と考える必要はない

製品カテゴリーから撤退することは、その製品を技術的に作れないことを意味しません。企業は限られた研究開発費と人材を、より成長性や収益性が期待できる事業へ配分します。

ソニーのFDR-X3000は空間光学ブレ補正という独自技術を搭載した本格的な4Kアクションカムでした。リコーも4K・超広角のWG-M2を製品化しています。[参照:ソニー「FDR-X3000」][参照:RICOH IMAGING「WG History」]

それでも後継機が続かなかったという事実は、技術とは別に、販売規模、競争環境、開発費、メーカー全体の事業戦略を考える必要があることを示しています。

まとめ:日本メーカーが作れないのではなく、競争の激しい市場へ再投資する理由が小さくなっている

日本メーカーが現在アクションカメラをほとんど開発していない理由を、「中国メーカーより技術力が低いから」と単純化するのは適切ではありません。日本企業は過去に実際にアクションカメラを開発しており、ソニーのFDR-X3000・HDR-AS300、リコーのWG-M1・WG-M2などが存在しました。現在はこれらのシリーズが継続されていないというのが実態です。[参照:ソニー「FDR-X3000/X3000R」][参照:RICOH IMAGING「WG History」]

現在のアクションカメラ市場では、カメラ本体の画質だけでなく、電子手ブレ補正、360度撮影、AI編集、スマートフォンアプリ、クラウド、SNS連携、マイク、マウントなどを含めたエコシステム全体で競争する必要があります。DJIは深圳のサプライチェーンへのアクセスを自ら強みとして挙げ、現在もAction、360、Pocket、ジンバル、マイクなどを継続的に展開しています。[参照:DJI「About Us」][参照:DJI「Handheld Imaging Devices」]

また市場そのものも決して簡単ではありません。米GoProは2025年に180万台のカメラを販売しながら、売上高は前年比19%減、販売台数は25%減となり、世界的な競争激化と市場シェア低下について報告しています。[参照:GoPro 2025年度報告]

そのため日本メーカーの現状は、「開発できない」のではなく、「すでにDJI・Insta360・GoProなどが激しく競争し、ソフトウェアや周辺機器への継続投資まで必要な市場へ、あえて再参入する経営上のメリットが大きくない」と考えると理解しやすくなります。

今後、日本メーカーが独自の大型センサー、光学技術、業務用途など明確な差別化を持って再参入する可能性は否定できません。しかし2026年時点の市場を見る限り、当面はDJI・Insta360などの中国勢とGoProを中心に競争が進み、日本の主要カメラメーカーは自社がより強みを発揮できる別の映像分野へ経営資源を振り向ける構図が続く可能性が高いでしょう。

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